東京の20代サラリーマンが猟銃所持許可を取得した話
2018/11/26
20代サラリーマンが猟銃の所持許可取得で奮闘した記録
20代で実銃のショットガンを撃ったことのある人はおそらく少ないだろう。
私もその少数派の中の一人ということになる。
これから所持許可を取得したいと考えているちょっと変わった人たちのためになればと思い、取得までの道のりを記録しておこうと思う。実際自分が猟銃所持許可を取得しようと思った際にネットで調べてみたが、ほとんど情報がなかった。
猟師が減って害獣の駆除がおっつかないと言われているけども、これじゃあ若い人が苦労して所持許可取るわけないよなと思った。
正直、私のような20代が所持許可を取るのはかなり大変だ。ましてやサラリーマンとなるとさらにきつい。
まあでも、実際に自分は取得できたわけなので、可能といえば可能だ。それでもやってやろうという人は以降の記録をぜひ参考にしていただきたい。
ちなみに、私は東京都在住で所持許可を取得した。
まず、取得に必要な最低条件
熱心に最後まで読み進めたはいいけど、最低条件に当てはまってなくて結局取得できないじゃんかというのでは時間が無駄になると思うので、最低限必要な条件を最初に書いておこうと思う。
- 平日の午前休、場合によっては1日休みが取れること
- 犯罪歴がない、破産していない、DVやストーカーじゃないこと
- それなりに趣味に使える金があること(初期投資で最低でも15~20万)
- 職場や近所の人に銃を持つことが知られてもいいこと
はい、以上が最低条件だ。
平日に午前休とか遅めの出社とかが可能なこと
まず最初の項目でアウトな人も多いんではなかろうか。サラリーマンをしていて平日に休みをとれと言う方が無理な話だろう。
なぜ平日に休みが取れなければならないか。それは頻繁に警察署へ赴かなくてはならないからだ。
所持許可申請にはいくつも段階があり、その都度警察署へ行って申請書を提出しなければならない。警察署は当然のことながら平日しか対応してくれないため、休みを取っていく必要があるのだ。
これは本当のことだ。なので最低でも「すんません、明日は10頃出社します...」くらいは言える環境でないと実質的に取得はできないことになる。
しかも、これは一度きりではない。何回か行かねばならない。取得までには早くとも半年以上かかると思うが、それまでに10回程度はいく覚悟が必要だ。
犯罪者じゃないこと、ストーカーとかじゃないこと
これはまあ、善良な市民として今まで生きてきていれば皆クリアしている項目かと思う。
たまにはちょっとやんちゃしてしまった人もいるかも知れないが、確か犯罪歴があったら絶対に取れないと言うわけではなかった気がするので、諦めきれないヤンチャは申請要項をググって調べて欲しい。
ちなみにスピード違反とかそんなんは大丈夫なので心配無用。
過去には渋谷の猟銃乱射とか、狂ったストーカー男が女性を撃ち殺したりとか、猟銃を使った犯罪が割と起こっているので、ヤバい人間には銃を持たせないのは当たり前ですね。
それなりに趣味に使える金があること
これも大事な項目。
所持許可の取得にはハッキリ言ってお金がかかる。最低でも15万ぐらい(銃購入含む)は使う覚悟がないと無理だと思う。
申請の度に、申請料というよくわからないお金を搾り取られていく。講習にもお金がかかって、最後の射撃教習なんかはそれだけで3~4万取られる。正直言って20代でなくともお金のかかる趣味だ。
「趣味にお金はかけられない」なんて人はまずやめておく事をオススメする。
お金をかけなくても楽しめる趣味はいくらでもあるんだし。本なんかは10冊買っても1万円ちょい、1ヶ月は楽しめるしね。
というのも、もしなけなしの金で取得まで漕ぎつけたとしても、そこからが地獄になってしまう。15万はあくまで取得までに必要な費用であって、そのあとは射撃場で撃つ度に1万5千円ほど飛んでいく。
一回の練習で100発撃って1万5千円だ。全く冗談ではなく、実際にそれだけかかる。
私も月一回撃ちに行っているわけだが、1ヶ月にそれくらいは趣味に使えないと厳しい。(これで若い人がうんぬんって、そりゃ当たり前でしょ...)
職場やご近所さんに銃を持つことが知られてもいいか
所持許可申請の最後の方には、身辺調査がある。
身辺調査がある。
この調査で、職場の人の連絡先や、家族の連絡先を聞かれる。そう、基本的に家族の同意が必要だ。
伝えた連絡先に警察が電話して、「この人は大丈夫な人ですか〜?」って聞いて回る。そこで、
「彼は酒に酔うと見境がつかなくなるところがありますかね〜」
なんて言われたら、多分アウト(笑)
まあ実際のところ基準は警察のみ知るところだが、酒を飲むのかとか、普段はどんな性格かとか、暴れた事はあるかとか、そんな事を聞かれたらしい。
ちなみに私は職場の上司2人に頼んだのと、あとは友人2人、それと親の連絡先を書いて提出した。友人1人を除いては全員に電話がいったらしい。普通に答えてもらえば大丈夫。嘘をつかせるのは良策とは言えない(笑)
言えないようなことがあるなら、潔く言ってもらって判断に任せるか、それか諦めるべき。
それと、近所に聞き込み調査される。これがなかなかに厄介。というのも、一人暮らしだとご近所づきあいなどは皆無に等しい。それでも、
「ご近所に聞き取り調査を行うので、事前に近隣の方にお話しされておいて下さい。」
みたいに毅然と言われる。まあ詳しくは後で書くとして、とにかく近所の人や家族にも知られる。それがどうしても嫌なら、諦めるしかないだろう。
条件が全てOKなら今すぐ初心者講習に申し込もう!
以上、まるで取得を諦めさせるために書いたように思われるかもしれないが、上記の最低条件を飲み込めないならおそらくどこかで諦めざるを得ない。嘘は一つも書いていないので信用してほしい。
「OK、やってやろうじゃねえか!」
と思えたクレイジーな方は、今すぐ初心者講習に申し込もう。
初心者講習とは、座学で猟銃の取り扱いなどについて丸一日かけて教わるイベントだ。しかしこの講習の最大のポイントは、最後にテストがあるという点だ。
テストと聞いて拒絶反応を示した人、安心してほしい。そんな難しいテストじゃあない。
考えても見てほしい。山に住んでる猟師さんも受けるテストなのだ。めちゃくちゃ難しかったら、それこそ誰も猟師なんてなれやしない。大丈夫だ。実際、私が受けた回では50人ぐらい全員合格していた。
テストは○×の2択式。
初心者講習は警察署に直接電話して、申し込む。
「銃の所持許可を取得したいと思っているんですが...」
とうやうやしく申し出ればOKだ。
ネット上の噂では、最初は断られるとか、理由を問い詰められるとか、警察官が高圧的に接してくるとかあったが、自分の管轄の警察署は非常に丁寧に対応してくれた。
ただ、取得の目的(標的射撃か狩猟か)と取得の理由は聞かれるので、考えておこう。
「趣味でクレー射撃をしたいと思いました。きっかけは...」
ぐらい言えればOKかと思う。
初心者講習の申請が通れば、薄めのテキストを警察署がくれる。これをバッチリ一通り読んでおけば、まあ受かると思う。自分はそれで受かったし、他のテキストは使っていない。
コツは1週間ぐらい前から一気に詰め込んで覚えてしまう事だ。幸運を祈る。
テストに受かれば次は教習資格認定申請(身辺調査)
晴れて最初の関門を突破しても休んではいられない。ようやくスタート地点に立ったというものだ。
次は教習資格認定の申請。何かと言えば、教習射撃で実際に銃を撃ってもいいですか?という申請だ。
この時に色々書類を揃えて出す必要がある。医師の診断書とかも必要で、この診断書はどこの病院でも書いてくれるわけではないので、警察署で紹介してもらうか、銃砲店に聞いてみよう。(ちなみに渋谷の銃砲店さんは親切に色々話してくださった。困ったらそちらに伺ってみるのも手かと思う。)
必要な書類は「教習資格認定 書類」とかでググれば出てくるのでいちいち書かない。それくらいは自分で調べられないなら取得は難しい。
そして前述の身辺調査はここで行われる。いくらテストに受かっても、身辺調査でダメと判断されたらアウトなので実質ここが取得できるかの分かれ目になる。
職場や知人、家族の連絡先を書いて提出し、あとは天に祈ろう。
この結果は1〜2ヶ月後に通知されるので結構間がある。私の場合は2ヶ月以内には結果が電話できたように思う。これはなかなか嬉しかった。
ここまでくれば実質、警察から所持許可のお墨付きをもらったようなものだ。あとは淡々とこなしていこう。
初めて撃つ実銃。教習射撃
ここまでくれば、実際に銃を撃つ許可が下りたという事。
という事で教習射撃と言って、実際に射撃場まで行ってショットガンを撃つ。
と、その前に警察からアナウンスがあると思うが、火薬類等譲受許可証といって、ショットガンの弾である散弾を購入するための許可証をもらっておこう。これはすぐもらえる。ただ例によって金を取られる。
弾を買うのにも許可証がいるのだ。
許可証を手に入れたら、近くの射撃場を検索して、「教習射撃の申し込みしたいんですけど」と電話しよう。3ヶ月以内に教習射撃をやらないといけないので、早めに予約するべし。
教習射撃は1日で終わる。よっぽどのことがない限り落とされたりはしないので、気楽に受けてこよう。
ここで初めてショットガンの反動を味わうことになる。ちなみに50発くらい撃つのでこれはちょっと驚いた。
銃の保管場所の確保
さて次は、銃の保管場所だ。
ここら辺から都心在住の若者は苦しめられることになる。
基本的に猟銃は自宅のガンロッカーに保管ということになっているのだが、私の場合は賃貸で、しかも管理会社に「銃は置くな」と言われてしまった。
諦めるしかないかと思ったが、ひつだけ救済措置が残されている。それは銃砲店や射撃場に委託保管といって、お金を払って預かってもらうことだ。
どうしても家に置けない場合は、委託保管するしかない。自分の場合だが、ある銃砲店に月3000円で保管してもらっている。
お金が必要な理由がだんだん分かってきてもらえただろうか(笑)
ちなみに、神奈川県の大井射撃場や伊勢原射撃場に電話してみたが、委託保管はもういっぱいになってしまって受けられないと言われた。射撃場はかなり人気なようだ。
家に置ける人はガンロッカーを購入しよう。ちなみに散弾を入れるようの装弾ロッカーも必要で、合わせて3〜4万は必要かと。
準備ができたら、警察が家の中を見にくる。ガンロッカーの設置状況を確認するためだ。
自分の場合は装弾ロッカーの確認にきてもらったが、本当に一瞬で終わった。1分ぐらいで帰っていったので、緊張していたのに拍子抜けしてしまうくらいあっけなかった。
銃砲店で銃を購入する
なんだか順番が逆のような気もするが、この段階で銃砲店で銃を購入する。
ただし、購入したのに銃を持って帰ることはできない。なぜなら所持許可がないからだ(笑)
所持許可はないけど、銃を購入していないと次の所持許可申請に進めないので、この段階で買ってしまう必要がある。
銃はいろんな種類があるが、とりあえずクレー射撃をやるなら上下二連のトラップ銃でOKかと思う。まあその辺は銃砲店のおじさんと仲良くなって色々聞いてみれば、ベストをチョイスしてくれるだろう。
私は中古で20万ほどのベレッタを買ったが、初期予算15万の方は中古で10万以下で買える銃を頑張って探そう。安いものであれば5~6万で売っているのをネットで見た。
あ、ちなみに新銃を買いたければ最低でも40万ぐらいは必要なのでご承知置きを。
購入すると銃砲店から書類をもらえるので、これを次の申請時に提出しよう。
所持許可の本申請。ようやくたどり着いた
書いていてもなんて長い道のりだったんだと思う。書くのも疲れてきた(笑)
ようやく、所持許可の申請である。
また色々な書類(大体は教習資格認定の時と同じ)を提出して、1ヶ月くらいしたらお呼びがかかる。
長い道のりだった。私の場合、初心者講習を受けてすでに9ヶ月ほど経っていただろうか。ようやく所持許可証が手に入る。
でもこれで終わりではない。最後の工程は、購入した銃の確認だ。
購入して銃砲店で待っているマイガンを受け取りに行き、そのまま警察署へ持っていって検査してもらう。今度は所持許可証を持っているから、持ち運びができるというわけだ。
私の場合、この時のために午後休をとって、会社からスーツで銃砲店に向かい、その足で警察署、そしてまた銃砲店に返しに行くという苦行を行った。汗だくスーツでなかなか過酷な運搬だった。
やったね、ようやく所持許可取得できたよ
正直かなり書いていて疲れた。
それだけ大変な道のりだったということだ。
ただ、これは警察官の方がおっしゃっていたことだが、
「銃の所持許可証はパスポートなんかよりずっと信用がある」
と。確かにその通りだと思う。世界で一番銃の所持条件が厳しいと言われるこの日本で、善良な市民でありそれなりにお金もあり、しかも警察から「銃を持たせるに足る信用できる人物である」というお墨付きをもらったということなのだから。
所持許可の取得に比べたら、パスポートなどコンビニでポテトチップスを買うぐらいの難易度でしかない。
というわけで、誰の役に立つとも知れぬことを延々と書いてきて意味があったかは分からないが、一応20代サラリーマンが所持許可を取るという割と貴重な体験談として書き記した。
最後の方は疲れてあまり詳細を書く元気もなかったので、
「もうちょっと突っ込んで聞きたい」
という稀な方がおられれば、コメントかtwitterで聞いてもらえればおそらく答えられると思う。
また、
「東京だったら射撃場どこらへんがアクセスいいんですか?」
とかも元気があるときに別記事にできればと思う。ちなみに私は車もなしで射撃場に通っているのでその辺の同じ境遇な感じの人とかアドバイスできるかと思う。
というわけで、今回は以上!